レキサルティの副作用【アカシジア・眠気・体重増加】と対策を解説

レキサルティ(一般名:ブレクスピプラゾール)は、統合失調症やうつ病・うつ状態(既存治療で効果不十分な場合)の治療に用いられる新しいタイプの抗精神病薬です。その作用機序から、従来の抗精神病薬に比べて副作用が少ないとされる一方で、どのような薬にも副作用のリスクは存在します。レキサルティの服用を検討されている方、あるいはすでに服用中の方にとって、副作用に関する正確な知識を持つことは、安心して治療を継続するために非常に重要です。この記事では、レキサルティの主な副作用、特に注意すべき重大な副作用やアカシジア、離脱症状について詳しく解説し、服用中の不安を解消するための一助となることを目指します。

レキサルティの重大な副作用

レキサルティを服用する上で、特に注意すべきは「重大な副作用」です。これらは発生頻度は低いものの、生命に関わる可能性や、重篤な後遺症を残すリスクがあるため、その兆候を早期に認識し、速やかに医療機関に連絡することが極めて重要です。

重大な副作用の兆候と初期対応

レキサルティの重大な副作用として、主に悪性症候群、遅発性ジスキネジア、高血糖・糖尿病性ケトアシドーシス・糖尿病性昏睡、横紋筋融解症、痙攣、無顆粒球症・白血球減少、肺塞栓症・深部静脈血栓症などが挙げられます。これらの兆候に気づいた場合は、直ちに服薬を中止し、医師や薬剤師に連絡するか、救急医療機関を受診してください。自己判断での服薬中止は、症状の悪化や別の問題を引き起こす可能性もあるため、必ず医療従事者の指示を仰ぐことが大切です。

発熱・無動緘黙・強度の筋強剛

これらの症状は「悪性症候群」の代表的な兆候です。悪性症候群は、抗精神病薬の服用によって引き起こされる稀ながらも重篤な副作用で、体温調節機能の異常、筋肉のこわばり、意識障害などが急速に進行します。

  • 発熱: 高熱(38℃以上、時に40℃を超えることも)が持続します。
  • 無動緘黙(むどうかんもく): 自発的な動きがほとんどなくなり、発話も失われる状態です。周囲の刺激に対する反応も低下します。
  • 強度の筋強剛(きんきょうごう): 筋肉が非常に硬くなり、関節の動きが制限されます。鉛管現象(筋肉が抵抗を示しながら動く)や歯車現象(カクカクとした動き)が見られることもあります。

これらの症状が見られた場合、緊急性が高いため、速やかに医療機関を受診する必要があります。

嚥下困難・頻脈・血圧変動

悪性症候群は、自律神経系にも影響を及ぼし、以下のような症状を引き起こすことがあります。

  • 嚥下困難(えんげこんなん): 食事や水分を飲み込むことが難しくなります。誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
  • 頻脈(ひんみゃく): 心臓の拍動が異常に速くなります。
  • 血圧変動: 血圧が急激に上昇したり、不安定になったりします。

これらの症状は、身体の重要な機能が障害されていることを示しており、注意が必要です。

発汗・白血球数増加・血清CK上昇

悪性症候群の診断には、血液検査やその他の検査値も参考にされます。

  • 発汗: 大量の発汗が見られ、脱水状態に陥ることもあります。
  • 白血球数増加: 体内で炎症反応が起きていることを示唆します。
  • 血清CK(クレアチンキナーゼ)上昇: 筋肉細胞の破壊が起こっている場合に上昇する酵素です。横紋筋融解症を合併している可能性を示します。

これらの検査値の異常は、医療機関での検査によって確認されます。

急性腎障害のリスク

悪性症候群が進行すると、体内で筋肉の破壊(横紋筋融解症)が起こり、その結果、血液中に放出されたミオグロビンが腎臓に負担をかけ、急性腎障害を引き起こすリスクがあります。

  • 症状: 尿量の減少、むくみ、全身倦怠感、吐き気などが現れることがあります。
  • 対処: 早期の診断と治療が重要であり、腎機能の保護のために適切な処置が必要となります。

これらの重大な副作用は稀ではありますが、起こりうることを認識し、異変を感じたらすぐに医療機関へ相談することが何よりも大切です。

アカシジア(錐体外路症状)とは

レキサルティの服用で比較的多く見られる副作用の一つに「アカシジア」があります。アカシジアは、抗精神病薬によって引き起こされる「錐体外路症状」の一種です。錐体外路症状とは、ドーパミン系の神経伝達物質のバランスが変化することで生じる、不随意運動や運動の異常を指します。

アカシジアは、精神的な落ち着きのなさとして感じられることが多く、「そわそわしてじっとしていられない」「座っているのがつらい」「足を動かしたくなる衝動に駆られる」といった特徴的な症状が現れます。これは患者さんにとって非常に不快な症状であり、治療の中断につながることもあるため、早期の発見と適切な対処が重要です。

レキサルティ服用開始時の注意点

アカシジアは、レキサルティの服用開始時や増量時に特に発現しやすいとされています。そのため、医療機関では通常、少量から投与を開始し、患者さんの反応を見ながら徐々に用量を調整する「少量漸増」という方法がとられます。

患者さん自身やご家族は、以下のような点に注意して、服用開始後の変化を観察することが大切です。

  • 身体の動きの変化: じっとしていられない、貧乏ゆすりが増える、部屋の中を歩き回ってしまう。
  • 内的な不快感: 内側から突き上げるような焦燥感、落ち着かない気分、イライラ感。
  • 睡眠への影響: 落ち着かなさから寝付けない、夜中に何度も目が覚める。

これらの症状は、服用開始後数日から数週間以内に現れることが多いため、この期間は特に注意深く観察しましょう。

アカシジアの症状と対処法

アカシジアの具体的な症状は多岐にわたりますが、代表的なものは以下の通りです。

症状の種類 具体的な症状
精神症状 不安感、焦燥感、いらだち、落ち着きのなさ、不快感
運動症状 じっとしていられない、足踏み、貧乏ゆすり、歩き回る、体位変換を繰り返す、足組み直し
身体症状 発汗、頻脈、呼吸困難感(稀)

アカシジアを疑う症状が現れた場合、最も重要なのは速やかに医師に報告することです。自己判断で服薬を中止したり、量を変更したりすると、病状の悪化や他の副作用のリスクが高まります。

医師は、症状の程度に応じて以下のような対処法を検討します。

  • 減量: レキサルティの用量を減らすことで、症状が改善することがあります。
  • 他の薬剤への変更: アカシジアの発現リスクが低い他の抗精神病薬への切り替えが検討されることがあります。
  • 対症療法薬の併用: アカシジアの症状を和らげるために、抗パーキンソン病薬、βブロッカー、ベンゾジアゼピン系薬剤などが一時的に処方されることがあります。

アカシジアは、適切な対処によって症状をコントロールできる場合がほとんどです。我慢せずに医療従事者に相談し、安心して治療を継続できるよう努めましょう。

レキサルティの離脱症状と服用中止

レキサルティに限らず、多くの向精神薬は、急に服用を中止すると「離脱症状」を引き起こす可能性があります。離脱症状とは、薬の服用を身体が突然やめることに適応できず、様々な不快な症状が現れる現象です。これは依存性とは異なり、薬が脳の神経伝達物質のバランスに影響を与えている結果として生じます。

急な服用中止によるリスク

レキサルティの服用を自己判断で急に中止することは、非常に危険です。主なリスクは以下の通りです。

  1. 離脱症状の発現: 身体が薬の作用に慣れているため、急な中断により脳内の神経伝達物質のバランスが急激に崩れ、様々な不快な症状が現れます。
  2. 原疾患の悪化・再発: 治療中の統合失調症やうつ病の症状が再燃・悪化する可能性があります。これは、薬によって抑えられていた症状が、薬の効果がなくなることで表面化するためです。
  3. 新たな精神症状の出現: 不安、焦燥、不眠、錯乱などの新たな精神症状が現れることがあります。

離脱症状の具体例

レキサルティの離脱症状は、個人差がありますが、以下のような症状が報告されています。

症状の種類 具体的な症状
精神症状 不安、焦燥感、抑うつ気分、興奮、錯乱、パニック発作、不眠、悪夢、幻覚、妄想、集中力低下、記憶障害、思考力低下、イライラ、怒りっぽくなる、無気力、感情の不安定さ
身体症状 吐き気、嘔吐、下痢、便秘、食欲不振、めまい、ふらつき、頭痛、筋肉痛、関節痛、しびれ感、電気ショックのような感覚(シャンビリ感)、発汗、悪寒、熱感、インフルエンザ様症状(倦怠感、鼻水、くしゃみなど)、不随意運動(ピクつき、震え)、動悸、血圧変動、耳鳴り

これらの症状は、薬の半減期や服用量、服用期間によって異なります。一般的に、服用期間が長かったり、高用量を服用していたりするほど、離脱症状が強く現れる傾向があります。

症状悪化・再発の可能性

レキサルティは、脳内のドーパミンやセロトニンのバランスを調整することで、統合失調症やうつ病の症状を改善します。服用を急に中止すると、このバランスが急激に崩れ、治療していた症状が悪化したり、再発したりする可能性が非常に高まります。

特に、統合失調症の症状(幻覚、妄想、思考障害など)が再燃すると、治療開始前よりも重篤になることもあります。うつ病の場合も、抑うつ気分が深まり、焦燥感や自殺念慮が高まるリスクも考えられます。

したがって、レキサルティの服用を中止したい、あるいは量を減らしたいと考える場合は、必ず事前に医師に相談してください。医師は、患者さんの状態を見ながら、時間をかけて少しずつ薬の量を減らしていく「漸減(ぜんげん)」という方法を推奨します。これにより、離脱症状のリスクを最小限に抑え、安全に服薬を中止または減量することが可能になります。

レキサルティのその他の副作用

レキサルティは比較的副作用が少ないとされていますが、重大な副作用以外にも、日常生活に影響を与える可能性のある一般的な副作用が存在します。これらの副作用は、多くの場合軽度であり、服用を続けるうちに体が慣れて軽減したり、対処法によって和らげられたりすることが多いです。しかし、症状が強かったり、長く続いたりする場合は、医師や薬剤師に相談してください。

消化器系の副作用

消化器系の副作用は、比較的一般的なものです。

  • 吐き気・嘔吐: 飲み始めに感じやすい症状です。
  • 便秘: 腸の動きが抑制されることで起こることがあります。水分や食物繊維の摂取を心がける、または必要に応じて便秘薬を検討します。
  • 口渇: 口の中が乾燥する感覚です。こまめな水分補給や、シュガーレスの飴をなめるなどで対処できます。
  • 食欲亢進・体重増加: 食欲が増し、結果的に体重が増加する可能性があります。これは代謝系の副作用としても重要視されており、注意が必要です。バランスの取れた食事や適度な運動を心がけましょう。

神経系・精神系の副作用

脳に作用する薬であるため、神経系や精神系の副作用も起こりえます。

  • 眠気: 服用初期に特に見られることがあります。車の運転や危険な作業は避けるべきです。服用時間を調整することで軽減する場合もあります。
  • 不眠: 眠気とは逆に、目が冴えて寝付けなくなることがあります。
  • めまい: 立ちくらみやふらつきを感じることがあります。特に立ち上がる際にはゆっくりと動くよう注意しましょう。
  • 頭痛: 軽度な頭痛を感じることがあります。
  • 不安・焦燥: 精神的な落ち着きのなさや、イライラ感を感じることがあります。アカシジアと区別が難しい場合もあります。
  • 振戦(しんせん): 手足の震えが見られることがあります。

皮膚・感覚器系の副作用

  • 発疹・かゆみ: 皮膚に赤みやブツブツ、かゆみが出ることがあります。アレルギー反応の可能性もあるため、症状が強い場合はすぐに医師に相談してください。
  • アカシジア: 前述の通り、錐体外路症状として比較的多く見られます。
  • かすみ目: 目のピントが合いにくくなることがあります。

これらの副作用は、あくまで個人差があります。同じ薬を服用しても、全く症状が出ない人もいれば、強く感じる人もいます。不安な点があれば、遠慮なく医師や薬剤師に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。定期的な診察時に、自身の体調変化を具体的に伝えるように心がけましょう。

レキサルティと他剤の比較・関連情報

レキサルティは非定型抗精神病薬に分類されますが、同じカテゴリーの薬剤と比較することで、その特徴や位置づけがより明確になります。また、その一般名や研究段階の適応外使用についても触れておきましょう。

ブレクスピプラゾール(一般名)

「レキサルティ」は商品名であり、その有効成分の一般名は「ブレクスピプラゾール」です。医薬品は通常、開発時に付けられる一般名(国際的非独占名称:INN)と、製薬会社が販売する際に付ける商品名(ブランド名)を持っています。ジェネリック医薬品として販売される際には、一般名がそのまま使われたり、一般名に製薬会社名が加えられたりすることが一般的です。レキサルティは比較的新しい薬であるため、現在はジェネリック医薬品はまだ販売されていませんが、将来的にブレクスピプラゾールを有効成分とするジェネリック医薬品が登場する可能性があります。

レキサルティとリスペリドン・ラツーダ・クエチアピン

レキサルティは「SDA(セロトニン・ドーパミン受容体部分アゴニスト)」に分類される非定型抗精神病薬であり、ドーパミンD2受容体とセロトニン5-HT1A受容体に対して部分アゴニスト作用を示し、セロトニン5-HT2A受容体に対してアンタゴニスト作用を示します。この作用機序は、同系統の他の薬剤と共通する部分もあれば、異なる部分もあります。

以下に、いくつかの代表的な非定型抗精神病薬とレキサルティの一般的な特徴を比較した表を示します。ただし、これらの特徴はあくまで傾向であり、個人差や用量によって異なることをご理解ください。

薬剤名 一般名 主な作用機序 特徴(傾向)
レキサルティ ブレクスピプラゾール ドーパミンD2部分アゴニスト、セロトニン5-HT1A部分アゴニスト、セロトニン5-HT2Aアンタゴニスト 他剤と比較して、錐体外路症状や代謝系副作用(体重増加・糖尿病リスク)の発現リスクが低い傾向がある。鎮静作用も比較的穏やか。
リスペリドン リスペリドン ドーパミンD2アンタゴニスト、セロトニン5-HT2Aアンタゴニスト 幅広い精神症状に効果。プロラクチン上昇や錐体外路症状のリスクがある。
ラツーダ ルラシドン ドーパミンD2アンタゴニスト、セロトニン5-HT2Aアンタゴニスト、セロトニン5-HT7アンタゴニスト、ノルアドレナリントランスポーター阻害作用 代謝系副作用(体重増加・糖尿病リスク)が比較的少ないとされる。鎮静作用は穏やか。食後投与が推奨される。
クエチアピン クエチアピン ドーパミンD2アンタゴニスト、セロトニン5-HT2Aアンタゴニスト、ヒスタミンH1アンタゴニスト、アドレナリンα1アンタゴニスト 強い鎮静作用があり、不眠や不安の改善にも用いられる。代謝系副作用(体重増加・糖尿病リスク)や起立性低血圧のリスクがある。

比較のポイント:

  • 錐体外路症状(アカシジアなど): レキサルティは、他の多くの抗精神病薬に比べて、この副作用の発現頻度が低いとされています。
  • 代謝系副作用(体重増加、糖尿病リスク): レキサルティは、ラツーダと同様に、代謝系副作用のリスクが比較的低い薬剤として位置づけられています。クエチアピンやオランザピンといった薬剤は、このリスクが高い傾向にあります。
  • 鎮静作用: レキサルティの鎮静作用は比較的穏やかです。クエチアピンのように強い鎮静作用を持つ薬もあります。
  • プロラクチン上昇: リスペリドンなどで見られるプロラクチン上昇は、レキサルティでは報告が少ないとされています。

これらの比較は、あくまで薬剤選択の一助となる情報であり、個々の患者さんの病状、既往歴、併用薬などを総合的に判断して、医師が最適な薬剤を選択します。副作用プロファイルは、患者さんのQOL(生活の質)に大きく関わるため、医師とよく相談し、納得して治療を進めることが重要です。

PTSD治療におけるレキサルティ

現在、日本ではレキサルティの正式な適応症は統合失調症と、うつ病・うつ状態(既存治療で効果不十分な場合)のみです。しかし、海外では心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療薬としての研究も進められています。PTSDは、強い精神的ストレスやトラウマ体験によって引き起こされる精神疾患で、再体験、回避、陰性認知・気分、過覚醒などの症状を呈します。

一部の研究では、レキサルティがPTSDの症状緩和に有効である可能性が示唆されていますが、これは現時点では「適応外使用」にあたり、確立された治療法ではありません。日本においてPTSD治療でレキサルティが処方されることは、現行の保険診療の枠組みでは認められていませんので、注意が必要です。

しかし、抗精神病薬がPTSDの症状(特に過覚醒やフラッシュバック)に対して補助的に使用されることはあり、今後の研究によって新たな適応症が追加される可能性もゼロではありません。常に最新の医学情報を確認し、医師の診断と指示に従うことが何よりも重要です。

レキサルティの処方・用法について

レキサルティは、医師の処方箋がなければ入手できない「医療用医薬品」です。自己判断での服用は避け、必ず専門医の診察と指示に基づいて使用する必要があります。ここでは、その剤形や添付文書の情報、そして効果・効能について簡潔にまとめます。

レキサルティOD錠

レキサルティには、通常の錠剤の他に「OD錠」と呼ばれる剤形があります。OD錠とは、「Orally Disintegrating Tablet」の略で、口腔内崩壊錠を意味します。

レキサルティOD錠の特徴:

  • 水なしで服用可能: 口の中に入れると唾液で速やかに崩壊するため、水がなくても服用できます。
  • 嚥下困難な患者にも対応: 錠剤を飲み込むのが苦手な方や、嚥下機能が低下している高齢者などにも適しています。
  • 服用し忘れ防止: 水を準備する必要がないため、場所を選ばずに服用できる利便性があります。

ただし、OD錠であっても、崩壊後に唾液で溶かして飲み込むため、最終的には胃腸に到達します。服用後はしばらく飲食を控えるなど、基本的な服薬ルールは守る必要があります。また、湿気に弱いため、PTPシートから取り出したらすぐに服用するよう注意が必要です。

添付文書情報

医薬品の「添付文書」は、その薬に関する最も詳細で正確な情報が記載された公的な文書です。レキサルティの添付文書には、以下のような情報が網羅されています。

  • 組成・性状: 成分、添加物、外観など。
  • 効能・効果: どのような疾患に適用されるか。
  • 用法・用量: 適切な服用量、服用回数、服用方法。
  • 使用上の注意:
    • 慎重投与: 特定の病気や状態(肝機能障害、腎機能障害、高齢者など)を持つ患者への注意。
    • 重要な基本的注意: 副作用の兆候、運転・危険作業の制限など、服薬中に特に留意すべき点。
    • 相互作用: 併用してはいけない薬(併用禁忌)や、注意が必要な薬(併用注意)。
    • 副作用: 発現頻度、重大な副作用、その他の副作用の詳細。
    • 妊婦、産婦、授乳婦等への投与: 各状況における安全性情報。
    • 過量投与: 誤って大量に服用した場合の対処法。
  • 薬物動態: 体内での吸収、分布、代謝、排泄に関するデータ。
  • 臨床成績: 治験データに基づく効果の検証。

添付文書は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトなどで一般に公開されています。患者さん自身が全てを理解する必要はありませんが、医師や薬剤師がこの添付文書に基づいて治療を行っていることを知っておくことは重要です。疑問点があれば、医療従事者に「添付文書にはどのように記載されていますか?」と尋ねることも有効です。

効果・効能

レキサルティの日本における正式な効果・効能は以下の通りです。

  1. 統合失調症: 幻覚、妄想、思考の乱れ、感情の鈍麻、意欲の低下などの統合失調症の様々な症状を改善します。ドーパミンD2受容体とセロトニン5-HT1A受容体に対する部分アゴニスト作用と、セロトニン5-HT2A受容体に対するアンタゴニスト作用により、ドーパミンとセロトニンの神経伝達を適切に調節することで効果を発揮します。
  2. うつ病・うつ状態(既存治療で効果不十分な場合): 抗うつ薬を服用しても十分な効果が得られない患者さんに対して、補助的にレキサルティを併用することで、うつ症状の改善が期待されます。この場合、レキサルティ単独ではなく、抗うつ薬との併用療法として使用されます。

レキサルティは、即効性があるというよりも、継続的な服用によって徐々に効果が現れる薬です。自己判断で服用を中断せず、医師の指示に従って服用を続けることが、治療効果を最大限に引き出すために不可欠です。

レキサルティ服用中の疑問Q&A

レキサルティを服用するにあたり、患者さんからよく聞かれる疑問についてQ&A形式で解説します。これらの情報は一般的なものであり、個々の状況については必ず担当の医師や薬剤師に確認してください。

レキサルティをやめるとどうなる?

A. レキサルティを急にやめると、前述の「離脱症状」や、治療していた元の疾患の「症状悪化・再発」のリスクが高まります。

具体的なリスク:

  • 離脱症状: 吐き気、めまい、頭痛、不眠、不安、イライラ、身体のピクつき、シャンビリ感(電気が走るような感覚)など、様々な不快な症状が現れることがあります。
  • 症状悪化・再発: 統合失調症の幻覚や妄想が再燃したり、うつ病の抑うつ気分が深まったりする可能性があります。治療開始前よりも症状が重くなるケースもあります。

対処法:

レキサルティの服用を中止したい、あるいは減量したい場合は、必ず事前に医師に相談してください。医師は、患者さんの状態や服用期間、用量などを考慮し、時間をかけて徐々に薬の量を減らしていく「漸減」計画を立ててくれます。これにより、離脱症状のリスクを最小限に抑え、安全に治療を終了することが可能になります。自己判断での中止は絶対に避けてください。

レキサルティの飲み始めに注意することは?

A. レキサルティの飲み始めは、体が薬に慣れていないため、いくつかの副作用が現れやすい時期です。特に注意すべき点を以下に挙げます。

注意点:

  • 眠気・めまい: 薬の作用で眠気やめまいを感じることがあります。特に服用初期は、車の運転や危険を伴う機械の操作は避けるようにしてください。
  • アカシジア: じっとしていられない、そわそわするといったアカシジアの症状が現れることがあります。もしこれらの症状が強い場合は、我慢せずに医師に報告してください。
  • 吐き気・消化器症状: 軽度の吐き気や便秘、口渇などの消化器症状が出ることがあります。
  • 症状の変化: 精神状態に変化がないか、ご自身やご家族が注意深く観察してください。特に、気分が極端に高揚したり、逆にひどく落ち込んだりしないかを確認します。
  • 服用量: 医師の指示された用量を守り、自己判断で増量・減量しないことが重要です。

これらの副作用は、服用を続けるうちに体が慣れて軽減することが多いですが、症状が強く出る場合は医師に相談し、適切な対処法を検討してもらいましょう。

レキサルティは精神病薬か?

A. はい、レキサルティは「抗精神病薬」に分類される医薬品です。

詳細:

「抗精神病薬」という名前から、「精神病(統合失調症など)の治療にしか使われない」というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、現在の精神医学では、抗精神病薬は統合失調症だけでなく、うつ病(特に既存治療で効果不十分な場合)、双極性障害、一部の神経症性障害など、幅広い精神疾患の治療に用いられています。

レキサルティも、統合失調症の治療薬として開発されましたが、その後の研究でうつ病の補助療法としての効果も認められ、日本でも適応が承認されました。これは、レキサルティがドーパミンやセロトニンの神経伝達を細かく調整する作用を持つため、精神症状の多様な側面に対応できるからです。

したがって、「精神病薬」という言葉の響きだけで服用に抵抗を感じる必要はありません。レキサルティは、脳内の神経伝達物質のバランスを整えることで、心の不調を改善する薬であり、患者さんの症状や状態に合わせて医師が適切に判断し処方しています。スティグマを感じることなく、医師と信頼関係を築き、治療に取り組むことが大切です。

まとめ:レキサルティの副作用と向き合う

レキサルティは、統合失調症やうつ病・うつ状態の治療において、重要な役割を果たす新しい抗精神病薬です。その作用機序から、従来の薬と比較して副作用が少ないとされていますが、いかなる薬にも副作用のリスクは存在します。特に、悪性症候群のような重大な副作用や、アカシジア、離脱症状については、その兆候を理解し、適切なタイミングで医療機関に相談することが、安全かつ効果的な治療を継続する上で不可欠です。

この記事で解説したように、レキサルティの副作用には多様なものがあります。しかし、ほとんどの副作用は一時的であったり、用量調整や対症療法によって管理可能であったりします。重要なのは、以下のような姿勢で治療に臨むことです。

  • 正確な知識を持つ: どのような副作用があるのか、どのような症状に注意すべきかを知ることで、早期発見・早期対応につながります。
  • 異変を感じたらすぐに相談: 体調に少しでも異変を感じたら、我慢せずに速やかに医師や薬剤師に連絡しましょう。
  • 自己判断での中止は避ける: 特に離脱症状のリスクがあるため、服薬の中止や減量は必ず医師の指示に従ってください。
  • 医師・薬剤師との連携: 症状や副作用について、定期的に医療従事者と情報共有し、納得のいく治療計画を立てることが大切です。

レキサルティを含む向精神薬による治療は、患者さんの生活の質を向上させるために行われます。副作用への不安を抱え込まず、医療の専門家と協力しながら、ご自身に最適な治療法を見つけていくことが、より良い回復への道となるでしょう。

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