失業保険をもらうデメリット5選|加入期間リセットや受給までの時間も解説

失業保険(雇用保険の基本手当)は、離職後の生活を支える大切な制度です。しかし、この制度を利用する際には、見過ごされがちなデメリットや注意点が存在します。これらの点を深く理解せずに受給を始めると、思わぬ負担や不利益を被る可能性があります。本記事では、失業保険をもらうことによるデメリットを網羅的に解説し、あなたが制度を賢く活用し、後悔しない選択をするための具体的な情報を提供します。

失業保険(雇用保険の基本手当)をもらうデメリット

失業保険、正式には「雇用保険の基本手当」と呼ばれるこの制度は、離職後の生活を安定させ、再就職を支援するために設けられています。多くの方が「もらえるものはもらっておこう」と考えるかもしれませんが、受給にはいくつかの注意すべきデメリットも存在します。これらのデメリットを事前に把握しておくことで、将来的な計画を立てやすくなり、賢い選択ができるようになります。

失業保険をもらうことによる主なデメリット

失業保険は、一見すると離職者の生活を全面的にサポートしてくれる万能な制度のように思えます。しかし、実際には受給条件、手続き、そして受給中の活動に一定の制約があり、これらが離職者にとってデメリットとなる場合があります。ここでは、失業保険をもらう上で特に意識すべき主なデメリットについて詳しく解説していきます。

自己都合退職と会社都合退職で受給額・要件が異なる

失業保険の受給資格や給付内容は、退職理由が「自己都合」か「会社都合」かによって大きく異なります。この違いを理解していなければ、計画が狂ってしまう可能性があります。

自己都合退職の場合

自己都合退職とは、転職、キャリアアップ、結婚、引っ越しなど、個人の意思による退職を指します。この場合、失業保険の受給においては、以下のような厳しい条件が適用されることが一般的です。

  • 給付制限期間の存在: 原則として、離職後7日間の待期期間に加え、2ヶ月間の給付制限期間が設けられます。この期間中は失業保険を受け取ることができません。つまり、退職してから実際に手当が支給され始めるまでに、最短でも約2ヶ月以上かかることになります。この間、無収入になるため、十分な貯蓄がなければ生活に大きな影響が出ます。給付制限期間は以前は3ヶ月でしたが、2020年10月1日以降の離職票で、5年間のうち2回までは2ヶ月に短縮されました。ただし、3回目以降は3ヶ月となります。
  • 給付日数の上限: 会社都合退職に比べて、給付日数が短くなる傾向があります。例えば、雇用保険の加入期間が1年以上10年未満の場合、自己都合退職の給付日数は90日間ですが、会社都合退職であれば120日~240日となる場合があります。給付日数が少ないということは、その分だけ経済的な支援が早く打ち切られることを意味します。
  • 受給資格の要件: 離職日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上必要です。

会社都合退職の場合

会社都合退職とは、倒産、解雇(懲戒解雇を除く)、事業所の廃止、早期退職優遇制度の適用など、会社側の都合や事情による退職を指します。これらは「特定受給資格者」または「特定理由離職者」と分類され、失業保険の受給において優遇措置が取られます。

  • 給付制限期間なし: 7日間の待期期間終了後、すぐに失業保険の支給が開始されます。自己都合退職のような2ヶ月間の給付制限期間がありません。これにより、離職後の経済的な不安を早期に軽減できます。
  • 給付日数の優遇: 自己都合退職と比較して、給付日数が長く設定されています。特に被保険者期間が長い方や、離職時の年齢が高い方ほど、給付日数が手厚くなる傾向があります。例えば、被保険者期間が1年以上5年未満で30歳未満の方の場合、自己都合退職では90日間の給付ですが、会社都合退職では90日間となります。しかし、被保険者期間が20年以上で45歳~60歳未満の場合、自己都合退職では150日間の給付ですが、会社都合退職では330日間と大幅に増えます。
  • 受給資格の要件: 離職日以前1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6ヶ月以上あれば受給資格があります。自己都合退職よりも短い期間で受給資格を得られるため、より多くの人が対象となります。

退職理由による違いの比較表

退職理由による主な違いを以下の表にまとめました。

項目 自己都合退職 会社都合退職(特定受給資格者・特定理由離職者)
給付制限期間 7日間の待期期間後、原則2ヶ月間(※5年間に2回まで。3回目以降は3ヶ月) 7日間の待期期間後、給付制限期間なし
受給資格要件 離職日以前2年間に、被保険者期間が通算12ヶ月以上 離職日以前1年間に、被保険者期間が通算6ヶ月以上
給付日数 雇用保険加入期間に応じて90日~150日 雇用保険加入期間・年齢に応じて90日~330日
メリット 自身の意思で退職日を決められる、キャリアプランに合わせやすい 給付開始が早い、給付日数が長い、受給資格要件が緩和されている
デメリット 給付制限期間が長く無収入期間がある、給付日数が短い、受給資格要件が厳しい 自身の意思ではない退職である場合が多い
その他 特定理由離職者(例:正当な理由のある自己都合)の場合、会社都合に準ずる優遇措置あり ハローワークで「特定受給資格者」等の判定を受ける必要がある

退職を検討する際は、これらの違いを十分に理解し、自身の状況と照らし合わせて最適な選択をすることが重要です。特に自己都合退職の場合は、給付制限期間中の生活費を確保しておくなど、事前の準備が不可欠となります。

申請手続きに時間がかかる

失業保険の申請手続きは、書類の準備からハローワークへの訪問、説明会の参加、失業認定日の設定など、複数のステップを経て進行します。この一連のプロセスには予想以上に時間と手間がかかることがあり、これもまたデメリットの一つとして挙げられます。

1. 必要書類の準備
まず、離職後には会社から「離職票」が発行されるのを待つ必要があります。この離職票は失業保険の申請に不可欠な書類であり、会社が発行手続きを行うため、手元に届くまでに数日から数週間かかることがあります。特に月末退職の場合、給与計算や社会保険手続きの関係で、離職票の発行が翌月にずれ込むことも珍しくありません。
その他にも、以下のような書類を自分で準備する必要があります。

  • 雇用保険被保険者証
  • 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
  • 印鑑
  • 証明写真
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
  • マイナンバー確認書類

これらの書類が一つでも欠けていると、申請手続きを進めることができず、出直しになることもあります。

2. ハローワークへの来所と求職の申し込み
離職票が手元に届いたら、居住地を管轄するハローワークへ赴き、求職の申し込みを行います。この際、必要書類を提出し、受給資格の決定を受けます。ハローワークは平日しか開いていないため、平日に時間を確保して足を運ぶ必要があります。また、時期によっては窓口が混雑しており、待ち時間が長くなることもあります。

3. 雇用保険説明会への参加
求職の申し込みと受給資格の決定後、原則として雇用保険説明会への参加が義務付けられます。この説明会では、失業保険の制度内容、受給中の注意点、求職活動の具体的な方法、失業認定日の重要性などが説明されます。説明会の開催日時も指定されることが多く、自身の都合に合わせられない場合があります。参加しないと失業認定が受けられず、手当の支給が遅れる原因となります。

4. 待期期間と給付制限期間の経過
自己都合退職の場合は、雇用保険説明会後にさらに2ヶ月(場合によっては3ヶ月)の給付制限期間があります。この期間中は手当が支給されないため、申請手続きが完了してもすぐに収入が得られるわけではありません。待期期間(7日間)を含めると、自己都合退職の場合、申請から最初の支給までに3ヶ月以上かかることも珍しくありません。この間の生活費をどのように賄うかを事前に計画しておく必要があります。

5. 失業認定日の設定と定期的な来所
初回認定日以降も、原則として4週間に一度、ハローワークへ来所し、失業認定を受ける必要があります。これは、受給資格者が「就職しようとする積極的な意思と能力があり、求職活動を行っているにもかかわらず、職業に就くことができない状態」にあることを確認するためのものです。認定日も原則として指定されるため、その日に合わせてスケジュールを調整する必要があります。

手続きに時間がかかることの具体的な影響

  • 経済的なプレッシャー: 特に給付制限期間がある自己都合退職の場合、無収入期間が長く続くため、精神的・経済的な負担が大きくなります。貯蓄が少ない場合は、生活が逼迫する可能性があります。
  • 転職活動への影響: 手続きに時間を取られることで、その分だけ転職活動に集中できる時間が削られることもあります。特に、求職活動の実績作りと並行して、書類作成や面接対策を進める必要があります。
  • 心理的な焦り: 手続きの複雑さや待ち時間の長さ、先の見えない無収入期間は、離職者の心理的な焦りを増幅させる要因となりえます。

このように、失業保険の申請手続きには想像以上に時間と労力がかかります。離職を考える際は、これらの手続きにかかる時間も考慮に入れ、余裕を持った資金計画とスケジュールを立てることが重要です。

受給中も健康保険・年金の支払いが発生

失業保険を受給している期間中であっても、健康保険と年金の支払い義務は継続します。会社員時代は給与から天引きされていたため意識しにくい部分ですが、離職後は自身で手続きを行い、保険料を納める必要があります。この費用負担は、失業中の生活において大きなデメリットとなり得ます。

年金受給額への影響

健康保険と年金、特に年金は老後の生活に直結するため、その影響は長期にわたります。

1. 健康保険の選択と負担
会社を退職すると、これまでの健康保険組合の資格を喪失します。その後は以下のいずれかの方法で健康保険に加入し直す必要があります。

  • 国民健康保険に加入する:
    ・離職者が個人で加入する一般的な方法です。
    ・保険料は前年の所得によって決まるため、離職直後は会社員時代の高い所得に基づいて計算され、高額になるケースが多いです。
    ・減免制度もありますが、手続きが必要です。
    ・離職票や所得証明などを持参し、居住地の市区町村役場で手続きを行います。
  • 任意継続被保険者制度を利用する:
    ・退職日までに健康保険の被保険者期間が2ヶ月以上ある場合、退職後も最長2年間、会社の健康保険に継続して加入できる制度です。
    ・保険料は会社負担分がなくなり、全額自己負担となるため、会社員時代よりも高くなることが多いです。ただし、所得の上限があるため、所得が高かった人ほど国民健康保険よりも安くなる可能性があります。
    ・退職後20日以内に手続きが必要です。
  • 家族の扶養に入る:
    ・配偶者や親が加入している健康保険の扶養に入れる場合、保険料はかかりません。
    ・ただし、扶養に入るには収入基準(年間130万円未満、60歳以上または障害者の場合は180万円未満)などの条件があります。失業保険の基本手当も収入とみなされるため、手当の金額によっては扶養に入れない可能性があります。

失業中の収入源が失業保険のみとなる中で、高額な健康保険料の支払いは大きな負担となります。特に国民健康保険は、前年の所得に基づき計算されるため、離職直後は保険料が高騰し、手当の多くが保険料で消えてしまうこともあります。

2. 年金の選択と負担
年金についても同様に、会社退職後は種別の変更が必要です。

  • 国民年金に加入する:
    ・会社員(厚生年金被保険者)だった方は、退職後、国民年金第1号被保険者へと切り替える必要があります。
    ・保険料は定額で、全国一律です。
    ・納付が困難な場合は、「国民年金保険料免除・納付猶予制度」を利用できます。申請し承認されれば、保険料の全額または一部が免除されたり、納付が猶予されたりします。この制度は、失業を理由とすることも可能です。
    ・ただし、保険料を免除・猶予された期間は、将来受け取れる年金額が減額される、または受給資格期間に算入されない期間が生じる可能性があります(一部免除の場合は、納付した期間に応じた年金額が支給されます)。
  • 家族の扶養に入る:
    ・配偶者が厚生年金に加入しており、かつ収入基準を満たせば、国民年金第3号被保険者となり、自分で保険料を納める必要がありません。
    ・こちらも健康保険と同様、失業保険の基本手当が収入とみなされ、扶養に入れない場合があります。

年金受給額への影響

失業中に国民年金の免除・納付猶予制度を利用した場合、老齢年金の受給額に直接的な影響が出ます。

  • 免除・猶予期間の年金額への反映: 国民年金の保険料を免除された期間は、保険料を全額納付した場合と比較して、将来受け取れる年金額が減額されます。例えば、全額免除された期間は、保険料を納付した期間の半分(2分の1)として年金額に反映されます。猶予期間は年金額には反映されませんが、受給資格期間には算入されます。
  • 追納制度の活用: 免除・猶予された保険料は、10年以内であれば後から「追納」することができます。追納すれば、年金額は全額納付した場合と同額になります。しかし、追納には経済的な余裕が必要であり、失業中の状況では難しい場合が多いでしょう。

社会保険(健康保険・厚生年金)との比較

会社員時代は、会社が保険料の半分を負担してくれていましたが、失業中はこれらの負担が全額自己責任となります。特に厚生年金から国民年金への切り替えは、将来の年金受給額に大きく影響するため、慎重な検討が必要です。

項目 会社員(被保険者) 失業中(任意継続除く)
健康保険 健康保険組合・協会けんぽに加入、保険料は労使折半 国民健康保険に加入、保険料は全額自己負担
年金 厚生年金に加入、保険料は労使折半 国民年金に加入(第1号被保険者)、保険料は全額自己負担
負担額 給与に応じて変動、会社が半額負担 前年度所得に応じて変動(健康保険)、定額(国民年金)
年金受給額 加入期間と所得に応じて増額される 免除・猶予期間は減額される可能性あり

失業保険を受給しているからといって、社会保険料の支払いが免除されるわけではありません。離職後の健康保険や年金の手続きは迅速に行い、免除・猶予制度の利用や任意継続、家族の扶養など、自身の状況に最適な選択肢を検討し、必要な手続きを漏れなく行うことが非常に重要です。そうしないと、予期せぬ多額の出費や、将来的な年金受給額の減少に繋がってしまう可能性があります。

月2回の求職活動・失業認定が必要

失業保険の基本手当は、単に失業しているだけで受け取れるものではありません。受給資格者は、「就職しようとする積極的な意思と能力があり、求職活動を行っているにもかかわらず、職業に就くことができない状態」にあることが求められます。これを証明するために、原則として4週間に一度の「失業認定日」にハローワークへ赴き、前回の認定日から今回の認定日までの間に所定の「求職活動実績」があったことを申告し、認定を受ける必要があります。

求職活動実績の要件

失業認定を受けるためには、原則として「2回以上」の求職活動実績が必要です。この求職活動には、単に求人情報を閲覧するだけでなく、以下のような具体的な行動が求められます。

  • ハローワークまたは職業紹介事業者(転職エージェントなど)が実施する職業相談・職業紹介:
    ・ハローワークの窓口で職員に仕事の相談をする。
    ・ハローワークの紹介で面接を受ける。
    ・転職エージェントに登録し、求人紹介を受ける、キャリア相談をする。
  • 各種講習・セミナーへの参加:
    ・ハローワークが主催する就職支援セミナーや職業訓練説明会への参加。
    ・公的機関が実施する再就職に役立つセミナーへの参加。
  • 求人への応募:
    ・インターネット上の求人サイトや企業の採用ページから応募する。
    ・履歴書・職務経歴書を提出する、面接を受ける。
  • 再就職に資する各種国家試験・検定等の受験:
    ・再就職に直接役立つ資格試験の受験も求職活動と認められる場合がありますが、その判断はハローワークによって異なるため、事前に確認が必要です。

求職活動実績として認められない活動

以下の活動は、原則として求職活動実績として認められません。

  • 単なる新聞やインターネットでの求人情報の閲覧
  • 知人への仕事の依頼や相談
  • 応募書類の準備のみ(応募が伴わない場合)
  • ハローワーク以外のセミナーで、再就職に直結しないもの

失業認定日の流れ

失業認定日には、以下のものを持参してハローワークへ来所します。

  • 雇用保険受給資格者証
  • 失業認定申告書(求職活動の実績を記入したもの)

窓口で職員との面談を通じて、求職活動の内容や就職への意欲などを確認されます。この際、求職活動の内容が不十分と判断されたり、就職の意思がないとみなされたりした場合は、失業認定が受けられず、手当が不支給となることがあります。

デメリットとしての側面

  1. 時間的拘束と手間:
    ・月に2回以上の求職活動を行い、4週間に一度ハローワークへ来所するというサイクルは、時間的な拘束を伴います。特にハローワークは平日にしか開いていないため、日中の時間を確保する必要があります。
    ・転職活動に集中したい場合でも、失業認定のためにハローワークへ足を運んだり、求職活動実績を作るために意図しない活動をしたりすることもあります。
    ・求職活動実績を記録し、申告書に記入する手間も発生します。
  2. 精神的なプレッシャー:
    ・「必ず2回以上の活動実績を作らなければならない」という義務感は、精神的なプレッシャーとなり得ます。
    ・特に、なかなか希望する仕事が見つからない状況で、無理に求職活動の実績だけをこなさなければならないと感じると、焦りや疲労感が増すことがあります。
    ・ハローワークの職員との面談も、人によっては精神的な負担と感じるかもしれません。
  3. 柔軟性の欠如:
    ・失業認定日は原則として指定されるため、その日に合わせて自身のスケジュールを調整する必要があります。急な用事や体調不良で認定日に来所できない場合、手当の支給が遅れたり、場合によっては不支給となったりするリスクがあります。
    ・転職活動の真っ最中で面接が重なった場合など、認定日の調整が難しいこともあります。

失業保険は、あくまでも「再就職を前提とした支援制度」であるため、求職活動は避けて通れません。これらの制約を理解し、計画的に求職活動を進めることが、スムーズな失業保険受給の鍵となります。しかし、その活動自体が、離職者にとって一つの負担となり得ることを認識しておく必要があります。

アルバイトに制限がかかる

失業保険は、「失業の状態にあること」、すなわち「就職しようとする積極的な意思と能力があり、求職活動を行っているにもかかわらず、職業に就くことができない状態」である人に支給される手当です。そのため、アルバイトやパートなどで収入を得る場合は、その活動に厳しい制限が課せられます。この制限は、失業中の生活設計において大きなデメリットとなり得ます。

アルバイト制限の基本的な考え方

  • 就職とみなされる基準: 雇用保険法では、原則として週20時間以上働き、かつ31日以上雇用される見込みがある場合は「就職」とみなされ、失業保険の受給資格を喪失します。
  • 収入と労働時間の申告義務: アルバイトやパートを行う場合、労働時間や収入の有無にかかわらず、失業認定申告書に詳細を記載し、ハローワークに申告する義務があります。これを怠ると「不正受給」とみなされ、厳しい罰則が科せられます。
  • 手当の減額・不支給: 申告したアルバイト収入や労働時間に応じて、失業保険の基本手当が減額されたり、支給が停止されたりする場合があります。

具体的な制限内容と影響

  1. 収入による減額・不支給:
    日額の考え方: 失業保険の基本手当は「日額」で計算されます。アルバイトなどで得た収入も「賃金日額」として計算され、これと基本手当日額の合計が、一定の上限額(目安として離職時の賃金日額の約80%相当)を超えると、基本手当が減額されます。
    基準額を超える収入: 賃金日額と基本手当日額の合計が、離職前の賃金日額の80%相当額を超える場合、その超えた分だけ基本手当が減額されます。
    最低賃金と減額: たとえ短時間のアルバイトであっても、日額換算で最低賃金以上の収入を得ると、基本手当が減額される可能性が高いです。例えば、基本手当日額が5,000円で、アルバイトで日額3,000円の収入を得た場合、減額対象となることがあります。
    「就職」とみなされる基準を超えた場合: 週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合は、完全に「就職」とみなされ、基本手当の支給が停止されます。
  2. 労働時間による制限:
    週20時間未満の原則: アルバイトを行う場合、原則として週20時間未満の労働に抑える必要があります。週20時間以上働くと、雇用保険の被保険者資格を得る可能性があり、「就職」とみなされて失業保険の受給資格を喪失するリスクが高まります。
    1日4時間未満の制限: 多くのハローワークでは、失業認定対象期間中に1日4時間以上の労働をした日を「就労日」とみなし、その日は基本手当が支給されない(ただし、就労しなかった日分の手当は支給される)という運用をしています。1日4時間未満の労働であれば、「内職・手伝い」として扱われ、収入額に応じて基本手当が減額される形になります。
    休日の労働: たとえ休日のアルバイトであっても、上記の労働時間や収入の基準を超えれば減額・不支給の対象となります。
  3. 申告義務と不正受給のリスク:
    詳細な申告: アルバイトの労働時間、日数、収入額を失業認定申告書に正確に記入し、ハローワークに提出しなければなりません。
    不正受給: 収入があるにもかかわらず申告しなかったり、虚偽の内容を申告したりすると、不正受給とみなされます。不正受給が発覚した場合、支給された手当の全額返還に加え、不正に受給した額の2倍に相当する金額(合計で3倍)の納付が命じられるなど、非常に重いペナルティが科せられます。最悪の場合、詐欺罪として刑事告訴されることもあります。

具体的な例と対策

  • 生活費の補填が難しい: 「失業保険だけでは生活が苦しいから、少しでも稼ぎたい」と考えても、アルバイトによる収入は失業保険の減額に直結します。結果として、思ったほど手元に残らない、あるいは手間だけが増えてしまうという状況に陥りやすいです。
  • 短期・単発の仕事に限定される: 上記の制限を考慮すると、失業保険受給中のアルバイトは、日雇いや単発、または極めて短時間の仕事に限定される傾向があります。安定した収入源を確保するのが難しくなります。
  • 「隠れて働く」ことの危険性: 不正受給のリスクを冒して「隠れて働く」ことは絶対に避けるべきです。税務情報や雇用保険加入履歴などから、ハローワークが不正を発見するケースは少なくありません。

失業保険を受給中にアルバイトを検討する場合は、事前にハローワークに相談し、自身の状況と予定している労働内容が失業保険の支給にどう影響するかを確認することが不可欠です。安易な判断でアルバイトを始めてしまうと、手当が減額されるだけでなく、不正受給の疑いをかけられるなどの大きなデメリットが生じる可能性があります。生活費と転職活動、そして失業保険の受給を両立させるためには、細心の注意と計画性が求められます。

失業保険をもらわない方が「得」なケース

失業保険は、離職者のセーフティネットとして非常に重要な制度ですが、状況によっては失業保険を受給しない方が、金銭的・キャリア的に「得」となるケースも存在します。ここでは、具体的にどのような場合に失業保険をもらわない選択肢が有利となるのかを解説します。

転職先が決まっている場合

離職前からすでに次の転職先が内定している、あるいは具体的な転職の目処が立っている場合は、失業保険を受給しない、あるいは受給期間を短くして再就職手当の活用を検討する方が賢明な場合があります。

再就職手当の活用

再就職手当とは、失業保険の受給資格がある人が、所定給付日数を一定以上残して早期に再就職した場合に支給される手当です。これは、早期の再就職を促進するための制度であり、失業保険を全て受け取るよりも総額で得になることがあります。

再就職手当のメリット

  1. 早期の安定収入: 再就職手当は、再就職が決定し、一定期間勤務した後に支給される一時金です。失業保険のように毎月受け取るのではなく、まとまった金額を早期に得られるため、経済的な安定に繋がります。
  2. 受給額が大きくなる可能性:
    ・所定給付日数の残りが「3分の2以上」の場合:支給残日数の70%
    ・所定給付日数の残りが「3分の1以上」の場合:支給残日数の60%
    これらの金額が基本手当日額に掛け合わされて支給されます。
    例えば、基本手当日額が5,000円で、所定給付日数が120日、そのうち80日を残して再就職した場合、
    80日(残日数) × 70% × 5,000円 = 280,000円が支給されます。
    もし失業保険を残り80日分受け取った場合、80日 × 5,000円 = 400,000円ですが、再就職手当は非課税であることや、早期に安定した職場と収入が得られることを考慮すると、再就職手当の方が総合的に有利となるケースが多いです。
  3. 社会保険への再加入: 早期に再就職することで、会社の健康保険や厚生年金に再び加入できます。これにより、失業中の国民健康保険料や国民年金保険料の自己負担が軽減され、将来の年金受給額も安定します。
  4. キャリアの空白期間短縮: 早期の再就職は、キャリアの空白期間を短縮し、次のキャリア形成にスムーズに移行できるメリットがあります。

再就職手当の受給条件

再就職手当を受給するためには、以下の主な条件を満たす必要があります。

  • 失業保険の受給資格決定後、待期期間(7日間)が終了していること。
  • 給付制限期間がある場合は、その期間が終了していること。
  • 基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上残っていること。
  • 再就職先での雇用が1年以上確実であると認められること。
  • 再就職先が、離職前の会社や関連会社ではないこと。
  • 失業保険の受給手続き後、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介により再就職したこと(あるいは、自分で見つけた就職先であっても、ハローワークに届け出て認められたもの)。
  • 過去3年以内に再就職手当や常用就職支度手当の支給を受けていないこと。

失業保険をもらわない(短縮する)方が得な理由

転職先がすでに決まっている場合、無理に失業保険の給付期間を消化しようとすると、以下のデメリットが生じます。

  • 無駄な求職活動: 再就職先が決まっているにもかかわらず、失業認定のために月に2回以上の求職活動実績を作る必要があります。これは時間と労力の無駄になりかねません。
  • 給付制限期間中の無収入: 自己都合退職の場合、給付制限期間中の2ヶ月間は無収入です。この期間に再就職先が決まっていれば、早く働き始める方が経済的に有利です。
  • 再就職手当の対象外となるリスク: 給付日数を長く使いすぎると、再就職手当の支給残日数の条件を満たせなくなり、手当を受け取れなくなる可能性があります。

したがって、転職先が明確に決まっている場合は、失業保険を漫然と受け取るのではなく、再就職手当の受給を視野に入れて、早期の就職を目標とすることが「得」な選択と言えるでしょう。

すぐに働けない場合

失業保険は「働く意思と能力がある」ことが受給の前提条件です。そのため、病気や怪我、妊娠・出産、育児、介護などで、すぐに働くことができない状態にある場合は、失業保険の受給を申請しない方が得策となる場合があります。

受給期間延長制度の活用

働けない状態が続く場合、失業保険の受給期間を延長できる制度があります。これは、本来の受給期間(離職日の翌日から1年間)を超えて、働けない期間分だけ受給期間を延長できる制度です。

受給期間延長制度のメリット

  1. 受給資格の温存: 働けない期間中に無理に失業保険の申請をしても、求職活動ができないため失業認定を受けられず、手当が支給されません。それどころか、受給期間だけが経過してしまい、働けるようになった時には受給期間が終了してしまうリスクがあります。受給期間延長制度を利用すれば、働けない期間は受給期間のカウントがストップし、本当に働けるようになった時に改めて申請・受給を開始できます。
  2. 最大4年間の延長: 病気・怪我、妊娠・出産、育児(3歳未満)、介護などの理由で働けない場合、最大で離職日の翌日から4年間(通常の受給期間1年+延長期間3年)まで受給期間を延長できます。
  3. 安心して療養・育児・介護に専念できる: 働けない期間は、無理に求職活動をする義務から解放され、自身の回復や家族のケアに集中できます。経済的な不安はありますが、精神的な負担は軽減されます。

受給期間延長の条件

  • 離職後30日以上、継続して働くことができない状態であること。
  • 原則として、離職日の翌日から1ヶ月以内(申請期限に例外あり)にハローワークへ申請すること。
  • 医師の診断書や母子手帳、住民票などの証明書類が必要。

失業保険をもらわない(申請を遅らせる)方が得な理由

  1. 求職活動義務の免除: 働けない状況で失業保険を申請すると、求職活動実績を作る義務が生じます。しかし、病気や育児などで動けない中で無理に活動しようとすれば、体調を悪化させたり、精神的に追い詰められたりする可能性があります。受給期間延長制度を利用すれば、この義務から一時的に解放されます。
  2. 受給資格の有効活用: 働けない期間に失業保険の受給期間を消費してしまうのは、非常にもったいないことです。延長制度を利用して受給資格を温存し、働ける状態になってから満額に近い手当を受け取る方が、結果的に経済的なメリットが大きくなります。
  3. 不正受給のリスク回避: 働けない状態にもかかわらず、求職活動をしていると偽って失業認定を受けようとすると、不正受給とみなされるリスクがあります。正直に状況を申告し、適切な手続きを取るべきです。

したがって、離職後すぐに働けない事情がある場合は、焦って失業保険の申請をするのではなく、まず受給期間延長制度の利用を検討すべきです。これにより、自身の体調や家族の状況を優先しながら、将来的に失業保険を最大限に活用できる道が開かれます。

再就職する意思・能力がない場合

失業保険の受給要件の根幹は、「働く意思と能力がある」ことです。そのため、離職後に何らかの理由で再就職する意思がない、あるいは健康上の問題などで再就職する能力がないと判断される場合は、失業保険の受給を申請しない方が賢明です。この条件を満たさないにもかかわらず申請すると、時間の無駄になるだけでなく、精神的な負担が増す可能性があります。

「働く意思と能力」とは

ハローワークにおける「働く意思と能力」の定義は、以下の通りです。

  • 働く意思: 新たな仕事に就くことを積極的に望んでいる状態。求人情報の検索、応募、面接などの行動を伴います。
  • 働く能力: 健康状態や身体的な条件が、仕事に就く上で支障がない状態。病気や怪我、妊娠・出産、育児・介護などで働けない状態は「働く能力がない」とみなされます(ただし、これらには受給期間延長制度などの特別な措置があります)。

失業保険を申請しない方が得な具体的なケース

  1. 当面の間、仕事を探す予定がない場合:
    専業主婦(主夫)になる: 結婚や出産を機に、しばらくは家庭に専念し、働く予定がない場合。
    自己啓発やスキルアップに専念: キャリアチェンジのために、一定期間は学校に通ったり、資格取得の勉強に集中したりする場合で、その間は就職活動をしないと決めている場合。
    家族の介護に専念: 高齢の家族の介護のため、一時的に仕事を離れて専念する必要がある場合。
    リタイアメント: 早期退職し、しばらくは余暇を楽しみたい、年金生活に入る予定があるなどの場合。
    これらの場合、求職活動の実績を作ることが難しく、失業認定を受けることができません。無理に形だけの求職活動をしても、時間と労力の無駄となり、精神的な負担だけが増します。
  2. 健康上の理由で働くことが困難な場合:
    ・重い病気や怪我、精神的な不調などにより、すぐに働くことが困難な状態にある場合。
    ・この場合も、「働く能力がない」と判断され、失業認定を受けることができません。
    ・ただし、病気や怪我の場合は「受給期間延長制度」を利用できる可能性があるため、ハローワークに相談し、適切な手続きを取るべきです。無理に失業保険を申請するのではなく、延長制度で受給資格を温存し、体調が回復してから改めて申請するのが賢明です。

失業保険を申請しないことのメリット

  • 求職活動義務からの解放: 失業保険の認定を受けるための求職活動義務から解放されます。自分のペースで次のステップを考える時間を持てます。
  • 精神的な負担の軽減: 働く意思や能力がないのに、無理に求職活動を行ったり、ハローワークへ通ったりする必要がなくなるため、精神的なプレッシャーが軽減されます。
  • 時間の有効活用: 求職活動に割くはずだった時間を、自己啓発、家族との時間、心身のリフレッシュなどに有効活用できます。

注意点

  • 経済的な計画: 失業保険を受け取らないということは、その間の生活費を自己資金で賄う必要があるということです。十分な貯蓄があるか、家族からの支援が期待できるかなど、経済的な計画をしっかりと立てておく必要があります。
  • 受給期間の確認: もし将来的に働く意思が芽生えた場合、失業保険の受給期間(離職日の翌日から1年間)は進行しています。期間内に申請しなければ、受給する権利は消滅します。長期的に働く予定がない場合でも、将来的な再就職の可能性を考慮し、受給期間延長制度の利用ができないかなど、ハローワークに一度相談してみることをお勧めします。

失業保険は、あくまで「一時的に職を失った人が、再就職するまでの生活を支援する」ことを目的とした制度です。この目的と自身の状況が合致しない場合は、無理に制度を利用しようとせず、自身のライフプランに合った選択をすることが大切です。


失業保険の加入期間がリセットされないメリット

ここまで失業保険をもらう上でのデメリットを主に解説してきましたが、制度にはもちろんメリットも存在します。特に重要なのが、「雇用保険の加入期間がリセットされない」という点です。これは、特定の状況下で大きなメリットになり得ます。

雇用保険の加入期間とは

雇用保険の加入期間は、失業保険の受給資格だけでなく、基本手当の給付日数にも影響します。一般的に、加入期間が長いほど、より長く手当を受け取れる可能性が高まります。

  • 受給資格:
    ・自己都合退職:離職日以前2年間に被保険者期間が通算12ヶ月以上
    ・会社都合退職:離職日以前1年間に被保険者期間が通算6ヶ月以上
  • 給付日数: 雇用保険の加入期間が長くなるほど、給付日数が多くなります(例:10年未満、10年以上20年未満、20年以上など)。

リセットされないことのメリット

失業保険(基本手当)を受給し終わっても、過去の雇用保険の加入期間自体が完全にリセットされてゼロになるわけではありません。厳密に言うと、失業手当の給付対象となった被保険者期間は、その後の給付においては算定対象から除外されますが、特定の場合においては過去の加入期間が依然として価値を持つことがあります。

この「リセットされない」という表現は、主に以下の2つの文脈でメリットとして捉えられます。

  1. 短期間での再離職時の影響緩和:
    もし失業保険を受給し、再就職した後に、比較的短期間(例えば1年未満)で再度離職することになった場合を考えます。このとき、前回の失業保険受給によって被保険者期間が「消化」されているため、短期間で再度失業保険を受け取ることはできないか、非常に難しいのが一般的です。
    しかし、例えば、前回の失業保険受給期間中に、就職が非常に困難な状況(重度の病気や怪我など)に陥り、受給期間延長制度を利用していた場合などが考えられます。この場合、延長期間中に再就職し、その後短期間で離職しても、延長制度の申請以前に積み重ねた被保険者期間が完全に消滅するわけではなく、次回の受給資格判定に影響する可能性があります。

    また、雇用保険の制度では、被保険者期間の計算に「通算」という考え方があります。これは、複数の会社での勤務期間を合計できることを意味します。一度失業手当を受給すると、その受給期間の算定基礎となった被保険者期間は次回以降の算定には使えませんが、制度上、過去の被保険者期間の情報自体はハローワークに記録として残っています。これが直接的なメリットに繋がることは稀ですが、制度の複雑な適用ケースや特別な事情がある場合において、過去の記録が考慮される余地があるという意味合いで「リセットされない」と表現されることがあります。

  2. 特定の要件における継続性の考慮:
    雇用保険には、基本手当以外にも、育児休業給付金や介護休業給付金といった制度があります。これらの制度も、一定期間以上の雇用保険加入期間が支給要件となっています。基本手当を受給したことで、直接的にこれらの給付金の加入要件を満たすための被保険者期間が「なくなる」わけではありません。
    例えば、失業保険を受給して再就職した後、すぐに育児休業を取得することになったとします。この場合、育児休業給付金の受給要件には「休業開始日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること」といった基準がありますが、再就職後の被保険者期間と、以前の被保険者期間が通算されることで要件を満たしやすくなるケースも存在します。
    つまり、一度失業保険をもらったからといって、雇用保険に関する全ての過去の履歴が白紙に戻るわけではなく、他の給付金や将来の制度適用において、その積み重ねが一定の価値を持ち続ける可能性がある、という点が、この表現の背後にあるメリットと言えるでしょう。

まとめ

「失業保険の加入期間がリセットされない」というメリットは、主に再就職手当の受給を考慮したり、将来的な育児・介護休業給付金の受給資格を確保したりする際に、間接的に影響する可能性があります。特に、短期間で再就職した場合の再就職手当は、この「リセットされない」という側面と深く関連しており、受給資格が残っていれば利用できるため、経済的なメリットが大きいと言えます。

しかし、基本的な理解としては、一度失業保険の基本手当の算定基礎となった被保険者期間は、次回以降の基本手当の受給資格には使えないという点が重要です。上記のメリットは、あくまで特定の条件下や他の給付金制度との関連性において考慮されるべきものです。自身の具体的な状況に合わせて、ハローワークに相談し、制度の詳しい内容を確認することが最も確実です。


失業保険をもらわない場合の注意点

失業保険をもらわない選択は、個人のキャリアプランや経済状況によっては合理的な判断となり得ます。しかし、その選択には無視できないリスクや注意点も伴います。これらの点を事前に把握しておくことで、後悔のない意思決定ができるでしょう。

空白期間が長くなる可能性

失業保険をもらわない(申請しない、あるいは申請しても途中で辞める)選択をした場合、その期間は収入がないまま求職活動を続けることになります。これにより、結果的に「キャリアの空白期間」が長くなる可能性が生じます。

1. 経済的なプレッシャーの増大:
・失業保険というセーフティネットがないため、貯蓄を切り崩して生活することになります。
・収入がない期間が長引くほど、貯蓄の目減りが加速し、経済的な不安が増大します。
・この経済的なプレッシャーは、精神的な余裕を奪い、焦りから妥協した転職先を選んでしまう原因にもなりかねません。

2. 転職活動への悪影響:
焦りによる判断ミスのリスク: 経済的な焦りから、「早く就職しなければ」という強迫観念に囚われやすくなります。これにより、自分の希望や適性とは異なる企業に応募したり、条件が悪い求人にも飛びついてしまったりするなど、冷静な判断ができなくなるリスクが高まります。
選考期間の長期化: 転職活動は、企業の採用状況や景気、個人のスキルや経験によって長期化することがあります。失業保険がないと、この長期化に耐える経済的基盤が弱まります。
採用担当者からの懸念: 長い空白期間は、採用担当者から「なぜこれほど期間が空いたのか」「その間何をしていたのか」といった疑問を持たれやすくなります。説得力のある説明ができなければ、選考で不利になる可能性があります。もちろん、自己啓発やスキルアップ、家族の介護など明確な理由があれば問題ありませんが、その活動内容や成果を具体的にアピールできるよう準備が必要です。

3. スキル・経験の陳腐化:
・特にITやマーケティングなど、変化の激しい業界では、数ヶ月から1年程度の空白期間でも、業界のトレンドや技術が大きく変化することがあります。
・仕事から離れることで、業務で培ったスキルや知識が陳腐化し、再就職時に求められるレベルに達していないと判断されるリスクが生じます。
・ブランクが長くなればなるほど、再就職へのハードルは高まります。

対策

  • 十分な貯蓄の確保: 失業保険を受け取らない場合は、少なくとも半年から1年程度の生活費を賄えるだけの貯蓄があるかを確認しましょう。
  • 計画的な転職活動: 漠然と仕事を探すのではなく、目標とする業界・職種、企業の選定、応募スケジュールなどを具体的に計画し、効率的に活動を進めることが重要です。
  • 空白期間中の活動: もし空白期間が生じる場合は、その期間中にスキルアップのための学習、ボランティア活動、副業など、キャリアに繋がる活動を行うことで、空白期間を有意義なものにする努力が必要です。
  • ハローワークへの相談: 失業保険を受け取らない場合でも、ハローワークの職業相談や求人紹介、セミナーなどは利用可能です。積極的に活用し、転職活動の支援を受けましょう。

失業保険をもらわない選択は、自由度が高い反面、経済的・キャリア的なリスクが伴います。特に空白期間の長期化は、その後の人生に大きな影響を及ぼす可能性があるため、慎重な検討と十分な準備が不可欠です。

経済的な不安

失業保険をもらわない選択は、直接的に経済的な不安と直結します。離職後の収入源が途絶える中で、生活費の全てを自己資金で賄うことになり、精神的な負担も増大します。

1. 貯蓄の急速な減少:
収入源の喪失: 会社員時代の給与が途絶えるため、貯蓄を取り崩して生活費、家賃、食費、光熱費、通信費、国民健康保険料、国民年金保険料などを支払うことになります。
想定外の出費: 医療費、冠婚葬祭、急な引っ越しなど、予期せぬ出費が発生した場合、貯蓄の減少スピードがさらに加速します。
生活水準の維持困難: 失業保険があれば、ある程度の生活水準を維持しながら求職活動を行えますが、それがないと、食費を切り詰めたり、娯楽費を完全にゼロにしたりするなど、生活水準を大幅に下げざるを得ない状況に追い込まれる可能性があります。

2. 住宅ローンや各種ローンの支払い:
・住宅ローンや自動車ローン、教育ローンなど、毎月定期的に発生する固定費の支払いは、失業中でも容赦なくやってきます。
・収入がない中でこれらのローンを支払い続けることは、貯蓄を急速に減らし、精神的なプレッシャーを増大させます。
・返済が滞ると、信用情報に傷がつき、将来的なローンの審査やクレジットカードの利用に悪影響を及ぼす可能性があります。

3. クレジットカードや消費者金融への依存:
・貯蓄が底をつき始めると、生活費を補填するためにクレジットカードのキャッシングや消費者金融からの借入れに頼ってしまうリスクが高まります。
・これらの借入れは金利が高く、一度利用し始めると返済が困難になり、さらに経済状況が悪化するという悪循環に陥る危険性があります。

4. 精神的な負担の増大:
・「このまま収入がなくても生活できるのか」「いつまで貯蓄が持つのか」といった経済的な不安は、離職者の精神を蝕みます。
・焦りから転職活動に集中できなかったり、面接で本来の力を発揮できなかったりすることもあります。
・家庭を持つ人にとっては、家族にも経済的な不安が波及し、家庭内の不和の原因となることもあります。

対策

  • 詳細な収支計画の作成: 離職後の毎月の固定費・変動費を正確に把握し、貯蓄の残高と照らし合わせながら、何ヶ月生活できるのかを具体的にシミュレーションしましょう。
  • 家計の見直しと支出削減: 不要不急の支出は徹底的に見直し、可能な限り削減しましょう。サブスクリプションサービスの解約、外食の自粛、光熱費の節約など、できることは全て行いましょう。
  • 副業や短期アルバイトの検討: 失業保険を受給しない場合、アルバイトの制限がないため、無理のない範囲で副業や短期アルバイトを検討し、少しでも収入を得ることで経済的な不安を軽減できます。ただし、その活動が本業の転職活動に支障をきたさないように注意が必要です。
  • セーフティネットの活用: 失業保険以外にも、生活困窮者自立支援制度や緊急小口資金貸付など、一時的な経済支援制度があります。必要に応じて、居住地の福祉窓口や社会福祉協議会に相談することも検討しましょう。

失業保険は、経済的な不安を軽減し、精神的な余裕を持って再就職活動を行うための重要な支援制度です。これを活用しない選択は、自己責任において強力な経済基盤と計画性を持って行う必要があります。

精神的な負担

失業保険をもらわない選択は、経済的な不安だけでなく、精神的な負担を大きく増加させる可能性があります。離職という大きな変化の時期に、孤立感や焦燥感、自己肯定感の低下といったネガティブな感情に苛まれるリスクが高まります。

1. 経済的なプレッシャーによるストレス:
無収入状態の継続: 貯蓄が減り続けることへの不安は、精神的な余裕を失わせ、常に漠然としたストレスを感じる原因となります。
家族への影響: 家族がいる場合、自分の無収入が家族の生活に影響を与えることへの罪悪感や責任感が増し、それがさらなる精神的負担となります。
睡眠や食生活の乱れ: 経済的な不安からくるストレスは、不眠症や食欲不振、過食といった心身の不調を引き起こし、悪循環に陥る可能性があります。

2. 孤独感と孤立感の増大:
社会との断絶感: 会社を辞めることで、日々のルーティンや社会との接点が失われます。特に、失業保険の申請などでハローワークへ通う機会がなければ、自宅に閉じこもりがちになり、社会から孤立しているような感覚に陥りやすくなります。
友人・知人との交流減少: 経済的な余裕がないため、友人との外食や趣味の活動などを控えるようになり、結果として人との交流が減少します。これがさらに孤独感を深めることになります。
相談相手の不在: 経済的な不安や転職活動の悩みを一人で抱え込みがちになり、誰にも相談できない状況が続くと、精神的な負担は増大します。

3. 焦燥感と自己肯定感の低下:
転職活動の長期化: 転職活動が思うように進まない、なかなか内定が出ないといった状況が続くと、「自分は社会に必要とされていないのではないか」という不安や焦燥感に苛まれます。
自己肯定感の低下: 収入がないこと、社会との繋がりが薄れること、思うような結果が出ないことが重なると、自身の能力や価値を疑い始め、自己肯定感が大きく低下することがあります。
比較による苦痛: 周囲の友人がキャリアアップしている話を聞いたり、SNSで楽しそうな生活を見たりすると、自分の現状と比較してしまい、さらに落ち込むことがあります。

4. 日常生活の質の低下:
規則正しい生活の困難: 会社員時代の規則正しい生活リズムが失われ、不規則な生活になりがちです。これにより、心身の健康が損なわれるリスクがあります。
目標の見失い: 漠然とした不安の中で、何のために転職活動をしているのか、将来どうなりたいのかといった目標を見失ってしまうことがあります。

対策

  • 精神的なセーフティネットの確保: 離職後のストレスは誰にでも起こり得ます。信頼できる家族や友人、知人に状況を話し、相談できる関係を築いておくことが大切です。
  • 定期的な運動と規則正しい生活: 適度な運動はストレス解消に効果的です。また、規則正しい睡眠やバランスの取れた食生活を心がけることで、心身の健康を保つことができます。
  • 社会とのつながりを維持: ボランティア活動に参加したり、地域のコミュニティ活動に顔を出したりするなど、社会との接点を意識的に持つようにしましょう。
  • 自己肯定感の維持: 小さな目標を設定し、達成する喜びを感じることで、自己肯定感を維持しましょう。転職活動に限らず、資格取得のための勉強や新しい趣味など、自分の成長を感じられる活動も有効です。
  • 専門家への相談: もし精神的な不調が長く続くようであれば、心療内科や精神科などの専門医、または公的な相談窓口(地域の保健所や精神保健福祉センターなど)に相談することをためらわないでください。

失業保険は、単なる金銭的な支援だけでなく、受給期間中にハローワークを通じて社会との接点を提供し、規則正しい求職活動を促すことで、離職者の精神的な健康をサポートする側面も持っています。これを活用しない場合、これらのサポートを自ら作り出す努力が必要になります。精神的な負担は、転職活動の成否にも直結するため、非常に重要なデメリットとして認識しておくべきです。


免責事項

本記事で提供する情報は、執筆時点での雇用保険制度に関する一般的な内容であり、その正確性や完全性を保証するものではありません。法律や制度は日々更新される可能性があり、個人の状況によって適用される内容が異なります。失業保険の申請や受給、その他関連する手続きについては、必ずご自身でハローワーク等の公的機関に直接お問い合わせいただき、最新かつ正確な情報をご確認ください。本記事の情報を元にした行動によって生じた一切の損害について、当サイトはその責任を負いかねます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です